巳年を迎えて
あけましておめでとうございます。令和7年は蛇の年となります。
蛇といえば、実は根岸の土地には蛇が登場する民話があるようです。今回は折角ですのでその民話をご紹介したいと思います。
むかし、わしがまだ小さかったころ、ここぁ武蔵国久良岐郡根岸村って呼ばれとっただがぁ。小高い丘のふもとに続く砂浜にぁ、毎日、赤銅色した漁師たちが赤ふんどし一丁で、大漁旗なびかせた小舟操って、威勢よく漁に出てったもんだ。
そうそう、あんときの亀ぁ、今でも生きとるかなあ。
毎年秋になると、この砂浜にぁ、一畳もあるでっけえ亀が、子を産むために上がってきおった。重い体で苦しそうにはい上がってくる亀を、村の衆は大八車に乗せ、中村坂を白滝不動様までひっぱりあげてやった。社で安産を祈願し、元気づけに酒飲ませてやると、すっかり元気になったもんだ。
「来年もまた来いよ。」ってんで、記念に甲羅に日付と根岸村って字彫ってやった。亀ぁみんなを振り返り、「ありがとよ。」って、何度も首ふって海ん中ぁ帰っていったなあ。
その白滝不動ってのは、根岸の滝の上にあって、宝積寺の分寺だが、そりぁでっけえ滝で、滝のあたりいっぺえ、小さなお不動様と、蛇の彫物があるんで、白蛇が住んでたっていわれとるだ。
横浜市PTA連絡協議会発行『横浜の民話』より抜粋。
蛇というよりは義理堅い亀が主役のお話ですが、白滝不動尊には守をする白蛇がいたと語られています。
日本では、白い蛇は弁財天の使いであるとうい信仰が各地で見受けられます。弁財天はもともと水の神仏であり、その使いである白蛇が、日本各地の水場を守るために出現しているといわれるのです。
もしかすると白滝不動尊には今も白蛇が坐し、長寿の大亀とともに根岸の地を見守っているのかもしれません。
令和7年における皆様の幸が、大亀の如く堅固で白蛇の如く長いものでありますよう、心よりお祈り申し上げます。
〇空海さんの御言葉〇
「山海の霈澤(はいたく)、萬劫に身を粉にせん。」
・山海の大雨のような滝の如き恩に、永久に報いたい。